スリービルボード(ネタバレあり)~登場人物全員悪人、と云う訳ではない。

アマゾンプライムにて鑑賞

ポスター画像

2017年・第74回ベネチア国際映画祭脚本賞、同年のトロント国際映画祭でも最高賞にあたる観客賞を受賞するなど各国で高い評価を獲得し、第90回アカデミー賞では主演女優賞、助演男優賞の2部門を受賞したドラマ。米ミズーリ州の片田舎の町で、何者かに娘を殺された主婦のミルドレッドが、犯人を逮捕できない警察に業を煮やし、解決しない事件への抗議のために町はずれに巨大な3枚の広告看板を設置する。それを快く思わない警察や住民とミルドレッドの間には埋まらない溝が生まれ、いさかいが絶えなくなる。そして事態は思わぬ方向へと転がっていく。娘のために孤独に奮闘する母親ミルドレッドをフランシス・マクドーマンドが熱演し、自身2度目のアカデミー主演女優賞を受賞。警察署長役のウッディ・ハレルソンと差別主義者の警察官役のサム・ロックウェルがともにアカデミー助演男優賞候補となり、ロックウェルが受賞を果たした。監督は「セブン・サイコパス」「ヒットマンズ・レクイエム」のマーティン・マクドナー

2017年製作/116分/G/イギリス
原題:Three Billboards Outside Ebbing, Missouri
配給:20世紀フォックス映画

 (映画.COMより)

 

 

 今日は膝が痛いです。

 

 すべてがうまくいかないの連鎖って、ほんとに嫌ですね。

 

 ざっくりとしたあらすじは、娘を強姦された挙句焼き殺されたミルドレッドが町外れの殺害現場に立て看板で 広告を打つんですね、 警察署長ビルは犯人を捕まえていない何をやっているんだ!という内容の。

 この看板が気に食わない レイシストの保安官ディクスンが広告を取り下げろと文句を言ったり、評判のいい署長なので、街の人々からも圧力を受けるんですが、ミルドレッドはタマを蹴り上げたり、親指にドリルで穴をあけたり、全くへこたれません。何を言っているか解らないでしょう。私もです。

 ビルが、直々に別にさぼってるわけじゃないんですよ、目撃者も証拠もないから捕まえられないのよ、なんて言っても「全国の男性のDNAを採取して検査しろ」と言われます。ビルは実は末期がんなのですが、それも分かったうえで「時間がないから急いで」と云う始末。

 別れたDV旦那も19歳!の再婚相手を連れてきながら、広告を取り下げろというし、ミルドレッドの同僚もディクスンに嫌がらせで逮捕されたり。そんな中、署長は自殺してしまいます。これは末期がんの闘病を嫌った上での行為なのですが、残された人たちはそうは思いません。ディクスンはキレた余りに看板を取り下げなかった広告屋をボコりまくった上2階の窓からブン投げますが、そのシーンを見ていた新任の署長(黒人)から速攻クビに。いや捕まえろよ。

 挙句、誰かに看板に放火されたミルドレッドは怒り狂い、深夜警察署に火炎瓶で攻撃(゚д゚)!。クビになったので、深夜隠れてビルからの遺書を読んでいたディクスンは、巻添えで大やけどを負います。彼の事を気遣うビルの遺書を読んで改心したディクスンは病院で同室になった広告屋に心から謝罪します。

 退院してバーで飲んでいたディクスンは、後ろの席でレイプ殺人の犯行を自慢している男の話を聞いてミルドレッドの娘を殺した犯人だと確信、わざと喧嘩をし、相手を掻きむしりボコボコにされるもDNAを手に入れますが、検査の結果犯行当時は軍務でアメリカ国内にいなかったことが判明。

 落胆してミルドレッドに報告するも、それとこれとは話が別として、レイプ殺人犯であることは間違いないので、2人で銃を持ってその男の所に行くのでした。その男の所に行ったらどうするかは、道々は話し合いながら。

 

いや、すごい映画でしたね。どこに向かうか全くわからないまま、えらい勢いで進んでいくストーリー。

  主にミルドレッドとビルとディクスン、この3人の 話になるわけですが、話が進むにつれてどんどんこの人たち大丈夫かなっていう点が出てくるんですね。それがどう変化していくか。

 ビルは最初ことなかれ主義的な人物風に描かれるわけですが、やるべき事はちゃんとやってるんです。町民からの信頼もありますし。ディクスンも最初はマジでダメな人だったのに、作品中多少なりとも成長します。ラスト、ミルドレッドの告白に対して、あの達観した回答。本当に人として成長したんだなと感じさせます。

 そしてミルドレッド、この人がホントにヒドイと云うか。自責の念に駆られすぎたのか暴走が酷い。DV旦那も悪いんですが、そりゃ別れるよなと思いますよ。娘も口が悪いし、息子はDVの仲裁で、後ろから父親の頸に包丁押し当てるし。どんな家庭環境かは推して知るべしですよ。

 どんどん家庭の不和が明らかになるので、だからこそムキになって広告看板を出したりしたのかなと思うわけです。それを燃やしたのがDV旦那という皮肉がいいですね。それにしてもこの町、ありとあらゆる犯罪行為が捕まらなさすぎ

 

 今まで提示されてなかったから解らなかった問題が、提示される事によってどんどん明らかになっていくという内容で、提示するものがあの看板であり、現代のSNS なんかを暗示しているのかなーと 、そういえばSNS描写がなかった気がするんですが、意図的なんですかね。

 ビルだって元々自殺するつもりはあったんでしょうけど、まさかのタイミングになってしまったって、みんなの行いが 誰にとっても間が悪い感じになってしまう 、そういったことの積み重ねの映画なんですよね。

だから 犯人じゃないけど、まぁとりあえず鬱憤晴らしましょう。やるかどうかはその時考えよう、正直乗り気でもないですよ、っていう あのラストになるんでしょうね。

 

 話がどこに飛んでいくか全く解らないまま二転三転し、ミステリーと云う訳ではないんで明確な謎解きもない、コメディと言うかブラックユーモアの利いた、何とも言えない映画だったなあと思います。すごく面白かったですよ。

 

ではまた