ジェームズ・ボンドとして(感想)~ダニエル・クレイグ版ボンドの記憶

どうもNOTOです。

右足首が痛くて走れません。走れども走れども落ちない体重が原因ですかね。

 

いやー面白かったですね、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」。余韻を心の中でねぶねぶしつつ、こちらも観てしまいました。

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ダニエル・クレイグジェームズ・ボンドとしての15年間を振り返るドキュメンタリー。ダニエルと『007』シリーズのプロデューサーであるマイケル・G・ウィルソンバーバラ・ブロッコリの率直な対談と、『007/カジノ・ロワイヤル』から最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』までの未公開映像から成る46分の番組となっている。

2021年製作/47分/イギリス・アメリカ合作
原題:Being James Bond: The Daniel Craig Story

(映画comより)

ダニエル・クレイグがボンド役に決定してから、最新作までの内幕をインタビューしたドキュメンタリーなんですが、

いや、ホント大変だったのねダニエル。

 

 これから「カジノロワイアル」から「ノータイムトゥダイ」までの、クレイグ版ボンドシリーズのネタバレをしまくりますので、未見の方はご注意ください。

 

 

 まぁキャスティングが発表された時のバッシングが凄くて、「似合わない」「金髪のボンド」とかならまだしも、「醜い」「息が臭い」とか、普通に悪口だし。「国民の71%が反対」って、どんなアンケートだよ。

 いや、そりゃ私も最初に聞いた時は「どちらかって云うとスメルシュじゃね」なんて思いましたよ。金髪のボンドってのも何か違和感がありましたし。ブロスナンがしっくり来過ぎてたんですよロジャー・ムーアも金髪じゃない、て、バーバラ・ブロッコリも言ってましたけどね。

 シリーズを一新するためのキャスティングかと思ってましたけど、バーバラ・ブロッコリの一目惚れだったみたいですね。シリーズを再構築する思惑はあったらしいですから結果的に良かったんでしょうけど。

 

 あまりのバッシングぶりに『カジノロワイアル』撮影スタッフの方が激怒して、ダニエルがなだめたってのが笑いましたけどね。「大丈夫だ。この映画は特別な映画になる」って。ホントになりましたからね。

 

 最初観たときは、まあなんて生真面目なボンドでしょう、なんて思いつつも、原作に準拠しながら現代風にリブートした内容は実に素晴らしいものでした。冒頭のパルクールアクションからすでに、今までとは違うけんね、と云う強い意志を感じましたよ。ギミックもほぼ無しですし。おお、やっぱヴェスパー死なせるんか、原作通りとはいえ、と感心したもんですよ。

 

 『慰めの報酬』が当初完成脚本なしで撮影スタートしたってのはびっくりしましたけど。無茶するねホント。そういやハリウッド脚本組合のストライキとかあったなぁ。

 まぁだからあんな感じだったのね、と云う一本でしたが。

 何せ最後はチャカ1丁で敵アジトにカチコミですからね。西部警察かよ。

 

 ちなみに個人的にはクレイグボンドシリーズのボンドガールではオルガ・キュリレンコが一番好きです、カッコいいよね。アナ・デ・アルマスはボンドガールて感じじゃないしなぁ。

 

 『スカイフォール』で、よりボンド個人を掘り下げる事になるんですが、最初からボンドの個人史を描き切るつもりで続けたと云うよりは、シリーズが進むにつれボンドと云う人物を掘り下げざるを得なくなったみたいですね。

 そりゃそうですよね、記号化してない一個人としてキャラクターを描こうとしたら、どんどん内面や来歴を掘り下げる事になるでしょう。監督もサム・メンデスになって、よりアートムービーぽくなりましたし。

 最後に残った2匹のネズミ、自らの鏡像であるハビエル・バルデムと対峙し、精神的母であるMを失うことにより、失いかけた自己を完全に確立するんですから、今後は記号化したキャラとしてシリーズを続ける事が出来るのかな、と思ったんです。

 前作で、正式の00要員になったと思ったらいきなり引退寸前のロートルスパイ扱いですからね。前作から今作までの間に1~20作までの冒険をしたことになるのか?と、どうにも釈然としなくて。

 クレイグボンド以前のシリーズと全部切り離して考えれば良いと思っていたんですけど、アストンマーチンDB5が出てくると、どうしても「コイツがゴールドフィンガー殺ったんか」とか思っちゃうんですよね。

 もちろんDB5の助手席で小言を言ってるMが、ボンドがシフトレバーに親指を置いたとたん黙るシーンは大好きです。

 

 「スペクター」でも結局ボンドの個人の過去に纏わる話になるんですよね。冒頭Mの遺言でスペクター幹部を殺しに行くんですが、Mはスペクターの事知ってたんかな。  MI6諜報員の義兄が偶然世界的犯罪組織のTOPて云うのも凄い偶然ですけど。今までの敵が全員スペクターのメンバーですよ。すげえ兄弟ゲンカ

 ブロフェルドさん、ボンドがスパイじゃなくて普通にサラリーマンとして就職してたらどうしてたんでしょうね。

 もうここで大団円ですからね。今までのボンドに全部ケリをつけ、マドレーヌと手に手を取ってさようなら。さあこっからは、元のフランチャイズに戻るのかと思ったら、もちろんそうはなりません。

 ダニエル・クレイグがボンドである限り、ボンドの人生を描かないといけないから。

 

 これ以上『ノータイムトゥダイ』でやる事と云ったらボンドの人生の再構築しかないですよ。そりゃ妻子も出来ますわな。

 最後の最後ですからね。すべてのタブーと云うか不文律を取っ払ってその人の最後を描くんなら、そりゃ死ぬしかないですよ。

 

 ウィルスに罹患してマドレーヌと娘に二度と触れる事が出来なくなった、と云う終盤の設定に「スゲェ!!」て、物凄い感心したんですよ。

 「これで私生活の無い記号としてのヒーローに戻りますよ、フランチャイズずっと続けますよ、てことか。なるほど、次期ボンドへのブリッジとして何となく納得できるわ」と思いましてね。

 以前もジョージレーゼンビーの恨みをロジャームーアで返してましたからね。こんな感じで緩やかにシリーズを地続きさせるのかと思いきや、まさか死ぬとは。

 

そこまで総決算するするとは思わなかったですよ。キャリー・フクナガ恐るべし。

 

 ま、「James Bond will Return」らしいですから、「死ぬかと思った」っつって帰ってくるんでしょうね。鷹山敏樹大下勇次の様に。

 

 アラフィフの老人としましては、俺が死んだ後も永遠に続くんだろうなぁ、なんて思っていたシリーズの(仮にとはいえ)最後を観れただけでも実に感慨深いですよ。

 

 ダニエル・クレイグは本当にお疲れさまでしたとしか言いようがありません。『スペクター』なんか足骨折してるのを補助機をつけて撮影してたらしいですから。

 『スペクター』後のインタビューで、「これ以上続けるなら手首切るわ」なんて言ってましたけど、その後「フルマラソン完走した瞬間に、またやるか、って聞かれてもまともな回答はできないよ」と言ってて、そりゃそうだ、って激しく同意しましたよ。

 

 いや、同時代にリアルタイムで、ダニエル・クレイグのボンドが観れて本当に良かったです。彼をキャスティングしたことにより、シリーズを一旦総括した重厚でドラマティックな007が観れたと思いますから。

 

 まぁ、個人的にはブロスナンボンドが一番好きなんですが。

 『ダイアナザーデイ』みたいなバカの極北まで突き抜けた007もたまには観たいですね。これはダニエル・クレイグでは多分出来ないでしょうし。

 

ではまた。